住友金属鉱山(本社:東京都港区)は2025年5月15日、熟練従業員の暗黙知や測定データを基に設備故障を予知するシステムを構築した。同社のニッケル工場(愛媛県新居浜市)と播磨事業所(兵庫県加古郡播磨町)の設備が対象である。
住友グループの住友金属鉱山は、鉱山開発、製錬、電池・機能性材料生産を行う総合非鉄金属企業である。製錬事業は、粉砕・溶融、溶解・浸出・浄液・電解など各工程が連続していて、1つの設備の故障が全体の生産性に大きく影響する。

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今回、ニッケル工場(愛媛県新居浜市)と播磨事業所(兵庫県加古郡播磨町)の設備を対象に、IoTデータを活用する予知保全システムを構築した(図1)。同システムは、熟練の従業員が培ってきた経験・暗黙知や、各設備の音・振動などの測定データ、実際に設備に発生した異常事象をもとに、故障の初期兆候を可視化する。蓄積したデータから故障のタイミングを予測するAIモデルも組み込んだ(画面1)。

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システム構築プロジェクトは、住友金属鉱山と、SIベンダーの日鉄ソリューションズ(NSSOL)、設備保全を担う日鉄テックスエンジの3社が共同で取り組んだ。住友金属鉱山は、データを収集して熟練従業員が持つ暗黙知を提供した。NSSOLは、設備状態監視システムなどを構築した。日鉄テックスエンジは、各故障事象に対するセンサーを設置し、データの収集方法を検討した。
予知保全システムを導入した設備については、すでに半数以上で成果が出ているという。今後、システムの対象設備を拡大し、国内外の各工場への導入を進めて、突発的な故障による稼働率低下を防ぎ、部品交換の頻度を適正化することで、安定操業の継続と生産性の向上を図っていく。